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行政や大学病院と連携しながら、街の専門医として患者さんを支える
<三重県津市 おがわ脳神経外科クリニック>

院長 小川裕行先生 院長 小川裕行先生

脳神経外科の勤務医として経験を重ねたあと、“専門的な医療を、親しみやすいクリニックで提供したい”という思いから小川裕行先生がおがわ脳神経外科クリニックを開業して10年余り。地域では数少ない認知症専門医として診療に当たり、リハビリテーションにも力を注いでいます。

診察を重ねながら認知症を学ぶ

JRの津駅から車で3分ほどの静かな住宅地の一画に、おがわ脳神経外科クリニックが開業したのは2005年6月。淡いオレンジ色の洋風の外観は、建設途中に近隣で「イタリアンレストランでもできるのでは」と噂が立ったほど。待合室も天井が高くゆったりとしており、さりげなく流れる音楽が患者さんやご家族の心を落ち着かせています。

「一昔前の診療所のような殺風景な雰囲気にはしたくなかったので、このような設計にしました」。

穏やかな表情でそう語る院長の小川裕行先生の専門は脳神経外科。スタッフとクリニック内で密に連携しながら、開業以来約3万人の患者さんの診療に当たってきました。

患者さんの年齢は幼児から高齢者まで幅広く、30代40代の患者さんでは片頭痛が、高齢者では認知症が多くなっています。

「実は、開業前に勤務医をしていたころは、認知症はほとんど診ていませんでした。しかし認知症が社会的に知られるようになり、患者さんが増えて、当クリニックにも『検査だけでもして欲しい』との依頼が来るようになったため、認知症に向き合いはじめたのです。診療を重ねながら私自身が学ばせていただき、必要を感じて認知症専門医の資格も取得したというのが実情です」。

認知症の症状は人によりさまざま

認知症の方が来院されるきっかけの多くは、同じことを何度も聞く、物をよくなくす、いつも何かを探しているなどの言動にご家族が気づいてのこと。

小川先生はご家族の話に耳を傾けながら、認知症かどうか、判断の手がかりを慎重に探します。

「一緒に暮らしているご家族でも気づいておられない症状がたくさんあります。おそらく“もう歳だから”“以前からそうだったから”といった理由で強く意識されないのでしょう。でも、ご家族のお話に鑑別のヒントがあるかもしれないので、こちらから『普段このような言動はありませんか?』と例を出して細かく確認するようにしています」(小川先生)。

長谷川式簡易知能評価スケールも、ほとんどの場合、看護師ではなく小川先生自身が行います。質問の理解力、答え方や間違えたときの取り繕い方などを目と耳で直接確認するためです。

「認知症の症状の出方は一様ではなく人それぞれなので、簡単には判断できません。30点満点の長谷川式の結果が25点以上あっても認知症の場合もありますから、慎重に見極めなければなりません」(小川先生)。

診療には良好な家族関係が大切

認知症だと診断した場合、小川先生は必ず患者さんご本人に結果を伝えるようにしています。

「その場では比較的あっけらかんとしている方が多く、驚いたりする方は少ないですね。ただ、ご自宅に帰ってから『私は病気じゃない』『もう病院には行かない、薬は飲まない』と言ってご家族を困らせる患者さんは少なからずおられます」(小川先生)。

そうした患者さんの治療を進めるうえで大切なのは、何よりもご家族の理解。ある程度、結果を予測して来院されているためか、診断を聞いてショックを受けるご家族は少数ですが「そこから認知症という病気をどこまで深く理解してもらうかが大切」だと小川先生は指摘します。

「患者さんの物忘れなどで日常生活に不便が出ているとしても、『病気なのだから』と受け入れていただかないといけません。ご本人の前で『あれもできない、これもできない』などと指摘するのは、かえって症状を悪化させかねません。ご家族の関係がぎくしゃくしないことが、認知症の治療には何よりも大切なのです」(小川先生)。

高齢者が増える中で、大切なのは情報共有

ご家族の理解と支えがあれば、治療を安定して進めやすいのですが、クリニック周辺の地域には、高齢のご夫婦や独居の方が多いのが現状です。

「この地域は新しい家もたくさんありますが、周辺には古い団地も多く、居住者の高齢化が進んでいます。認知症の理解度も人によりさまざまで、情報量の多い都会に比べると、まだまだ啓発が足りないと言わざるを得ません」。

そう話す小川先生は、現時点では医療や介護の関係者にも理解不足が見られると明かします。

「私が認知症専門医の資格を取ったのは2009年で、その頃に比べれば理解は広がっていると思います。しかし、地域の医療全体を俯瞰して見ると、認知症に関する情報共有の仕組みやケアの体制は決して十分に整っているとは言えません」。

また、他の医療機関などから紹介されて同クリニックに来る患者さんがほとんどいない状況にも、小川先生は問題を感じています。

「物忘れなどをかかりつけ医に相談しても“専門ではないから”と取り合ってもらえず、他の病院への紹介もしてくれなかったと言われる患者さんが少なからずおられます。困ってご近所の方などに相談されて、ようやく当クリニックを知り来院されるということもあります。中にはかかりつけ医がおらず、定期的な検診さえ受けておられない高齢者もおられます」。

一方、せっかく来院されて診断がつき、治療を始めたにもかかわらず、突然来られなくなる患者さんもいます。

「他院で治療されているのか、他の病気になられたのか・・・こちらでは把握できないので非常に心配しています。タイミングを見て、高齢者支援に携わっている方々と連絡を取り合う必要があると考えています」。

徐々に拡充しつつある行政機関との連携

一方で、行政との連携は徐々に拡充されてきています。

津市には10ヵ所の地域包括支援センターがありますが、小川先生は「どの地域包括支援センターにも顔見知りの方がいます」と言います。

津市では2015年に認知症の方を医療・介護につなげるための初期対応にあたる、認知症初期集中支援チームを開設しており、保健師、社会福祉士などの専門職が認知症の方の生活をサポートしています。小川先生はこの初期集中支援チームの一員としてチーム医を務めており、行政と連携しながら専門医としての助言、アドバイスなどを行っています。また、介護施設などのスタッフを対象にした認知症関連講座の講師も務め、地域の介護・福祉従事者との連携も深めています。

一般市民への啓発の拡大が今後の課題

地域における専門知識やノウハウの発信、共有という面では、三重大学医学部が中心的な役割を果たしています。例えば同大の認知症医療学講座は、月に1回のペースで事例検討会を開催し、小川先生も参加しています。この会にはケアマネジャーなども参加しており、お互いの顔と名前を知り、地域で連携するきっかけにもなっていると言います。

また、同クリニックは院内にMRIを備え、認知症の検査にも活用していますが、さらに脳内の血流量を調べるSPECT検査が必要だと小川先生が判断した場合には、三重大学を紹介しています。

こうした連携に一定の手応えを感じながらも、小川先生はもっと連携を拡充すべきだと語ります。

「医療や介護従事者向けの講座は開講されていますが、参加する顔ぶれはだいたい同じです。また、一般市民を対象にした講習会などはほとんど行われていません。まだまだ啓発や情報共有は十分とはいえないのが実情です」。

小川先生は地域連携、啓発活動の拡充を今後の課題として挙げる一方、効率的に認知症を診断する工夫が必要だと持論を語ります。

「現在は、専門医が問診をし、ご家族からも詳しくお話を聞いたうえで診断をつけています。しかし、今後さらに患者さんが増えると、このやり方では対応できなくなると思います。もっと効率的な診断の手法はないか、私自身も模索しています」。

将来はクリニックで生活支援のアドバイスを

小川先生は同クリニックの今後の展望として「サービスと人員の強化」を挙げます。

同クリニックは、リハビリテーションにも力を注いでおり、院内にリハビリ室を設け、理学療法士による通所リハビリ(デイケア)を実施。脳卒中や認知症の方で、歩行障害や日常生活動作に障害のある方が活用しています。こうした特徴を生かしつつ、体制をさらに充実させるのが、小川先生が描くクリニックの将来像です。

「認知症を診られる医師がもう1人いて、介護制度などの生活面をサポートできるスタッフが常駐しているのが理想です。スタッフの教育などいろいろな課題はありますが、現在は、津市だけでなく、近隣の名張、桑名、四日市のほか県外から来られる患者さんもおられます。そうした方々のご期待に応えるためにも、ぜひ診療体制を充実させたいと思っています」。

 

取材日:2017年1月17日

おがわ脳神経外科クリニックの外観

おがわ脳神経外科クリニック

〒514-0061  
三重県津市一身田上津部田1414-1
TEL:059-221-0234

施設のホームページへ

 

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