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地域の声に応えて物忘れ外来を開設し、認知症サポートチームも結成
<愛知県常滑市 常滑市民病院>

脳神経外科部長兼リハビリテーション科部長 岩田欣造先生 脳神経外科部長兼リハビリテーション科部長
岩田欣造先生

愛知県の西部に位置する常滑市は、中部国際空港の開港や大掛かりな宅地開発などにより、若い世代が流入している地域です。その一方で、高齢者の人口も増加が続き、高齢化が着実に進んでいます。公立病院として長年にわたって住民の健康を支えてきた常滑市民病院では、地域の高齢化に対応して物忘れ外来を開設、多職種による認知症サポートチームを結成して手厚い認知症治療を行っています。

高齢化が進む中、市の健康の拠点として認知症治療を提供

1959年に開院した常滑市民病院は、約60年の長きにわたり市民の健康に貢献してきました。2015年には、開発が進む飛香台ニュータウンに新築・移転。真新しい建物に高機能な医療機器を備えた、急性期から通院までを支える地域医療の中心となっています。

常滑市では、要介護1~3の軽度・中度の認定者の割合が全国平均より高く、要支援・要介護認定者の約半数が認知症です。今後高齢化が進む中で認知症のさらなる増加が予想されるため、同院では2014年12月、脳神経外科に物忘れ外来を開設しました。

同院で物忘れ外来を担当する、脳神経外科医の岩田欣造先生は、「常滑市近隣には認知症を診療できる病院が限られており、初診の予約もなかなか取りにくいという状況です。認知症診療へのニーズが急速に高まっている状況を受けて、当院でも物忘れ外来を始めました」と話します。

物忘れ外来が開設された後、「認知症治療には多職種のスタッフが関わっていく必要がある」との考えからスタッフが声を上げ、“認知症サポートチーム”が結成されました。同チームは、病棟看護師長、認知症看護認定看護師のほか、薬剤師、医療ソーシャルワーカー、介護福祉士らで構成され、情報交換を重ねながら認知症のケアにあたっています。

かかりつけ医への周知で紹介が増加、病診連携で地域をサポート

認知症看護認定看護師 纐纈亮さん 認知症看護認定看護師 纐纈亮さん

物忘れ外来の診察は週2回。岩田先生の診察に加え、認知症サポートチームの一員である認知症看護認定看護師の纐纈亮さんが問診を行って、家族歴や社会歴などの情報を収集します。さらに、神経心理検査や抗うつ検査などの結果を併せて治療方針を決めています。

MCI(軽度認知障害)の人には3、4ヵ月後に再検査を行って経過を観察しており、ご本人やご家族の不安解消に努めています。

また、地域連携室のスタッフがかかりつけ医を訪問したり、かかりつけ医を招いて、拡大医局集談会を開催したりと、物忘れ外来の存在を周知したため、かかりつけ医からの紹介で受診する患者さんも増加しています。物忘れ外来の患者数は開設してしばらくは、月50~60人でしたが、現在では約3倍に増えました。

かかりつけ医から紹介された患者さんについては、ある程度症状が落ち着くまで岩田先生が治療し、その後はかかりつけ医に戻すという病診連携を行っています。

物忘れ外来を受診する人が急増した要因の一つとして、運転免許の更新時に診断書を要する人が増えたことが考えられます。また「運転をやめるよう、岩田先生から本人に話してほしい」と希望するご家族も少なくありません。「ご自分で車を運転して来院した際に、事故を起こした方もいます。高齢者の事故が増えていますから、今後も免許更新時に診断書が必要になる人は増えてくるでしょう」と話す岩田先生。同院のある飛香台ニュータウンは生活に便利な環境ではあるものの、認知症と運転については、今後さらに重要な問題になると考えています。

入院患者さんにも、認知症サポートチームによる適切なケアを提供

認知症サポートチームのカンファレンス 認知症サポートチームのカンファレンス
脳卒中リハビリテーション看護認定看護師 位田みどりさん 脳卒中リハビリテーション看護認定看護師
位田みどりさん

認知症サポートチームの活動は、当初は物忘れ外来に限られていましたが、現在は入院中の患者さんにも対応しています。チームで情報を共有し合って看護計画を立て、定期的なカンファレンスや病棟の巡回を行うなど、認知症ケアの向上を目指して精力的に活動を続けています。

新病院へ移転後、“コミュニケーション日本一の病院”の実現を基本理念に掲げている同院では、職種や診療科の垣根を越え、病院全体が一つのチームになって質の高い医療を実践する“スタッフ間コミュニケーション”を重視しています。その理念は認知症サポートチームにも浸透しており、チームの一員で、脳卒中リハビリテーション看護認定看護師の位田みどりさんは、「経験豊富なスタッフが若手にさまざまな問いかけをして、意見を引き出すことを大切にしています」と話します。

「経験の浅いスタッフが自信をつけ、専門性の高い多職種のスタッフが集まるカンファレンスの場で、自分の意見を言えるようになると、病棟でも患者さんに積極的に声をかけるなど主体的に行動できるようになります。チーム内の風通しを良くしてコミュニケーションを深め、より良いチーム医療につなげていきたいですね」(位田さん)。

纐纈さんも、「認知症の人は自分の言葉で表現するのが難しいので、どのような思いでいらっしゃるのかを想像することが大切です」と話し、チーム医療の充実のために、若いスタッフの認知症ケア教育にも熱心に取り組んでいます。

一人ひとりの情報を共有し、退院後の生活まで支援

病棟も物忘れ外来も、同じメンバーが担当しているので、情報を共有しやすいのも認知症サポートチームの特徴です。一人の患者さんの情報をチーム全体で共有し、ケアを行うことで、入院から退院後の通院までを見据えた継ぎ目のないケアの提供を目指しています。

退院後は、定期的に外来を受診する患者さんの情報を、病棟の看護師に共有しています。

「情報共有は継続することが重要です。認知症の症状が進行していっても、スタッフ間で情報を共有できていれば、患者さんは医療とつながり続けていられると思います」(纐纈さん)。

早期の受診促進や、多様性のあるサービスが今後の課題

同院のスタッフは、患者さんの受診を待つだけでなく、積極的に院外へ出て、地域住民とのコミュニケーションを図っています。老人会や福祉施設などで健康に関する講義を行うほか、毎年開催される地域のイベント(常滑焼まつりや農業まつりなど)にも多くのスタッフが参加し、市民の健康チェックや物忘れ外来のPRを行うなど、予防医学にも注力しています。また同院は、常滑市が地域包括ケアシステムの構築に向けて設置した“認知症部会”のメンバーとなり、市内の認知症ケアパス作りにも取り組んでいます。

しかし、物忘れ外来の存在が浸透し、かかりつけ医からの紹介が増えた半面、物忘れを心配して自分から受診する人が減りつつあります。早期発見・早期治療につなげるため、MCIの段階での受診を増やすことが同院の今後の課題です。

皆さん 皆さん

さらに、岩田先生が危惧しているのは、男性がデイサービスなどを勧めても利用したがらず、家にこもりがちになることです。もともと、男性は地域とのつながりが希薄で、老人会などの認知症予防講座に参加するのも女性が中心です。家にこもっていると刺激が少ないため、認知症の進行スピードを抑えられないだけでなく、ご家族が一人で負担を抱えることにもなりかねません。

「現在のようなデイサービス、デイケアのスタイルよりも、認知症カフェのほうが男性には行きやすいのではないでしょうか。今後は、一人ひとりに合った、さらに多様性のあるサービスを提供していかなければなりません」(岩田先生)。

認知症サポートチームの結成から1年足らず。市民の健康を守るために尽力する岩田先生とスタッフの新たな挑戦はまだ始まったばかりです。

 

取材日:2017年1月12日

常滑市民病院の外観

常滑市民病院

〒479-8510  
愛知県常滑市飛香台3-3-3
TEL:0569-35-3170

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