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患者さんとご家族に心から向き合ってきた経験から、本当に必要な専門診療を提供-専門スタッフのそろう診療所
<兵庫県加古川市 いるか心療所>

院長 九鬼克俊先生 院長 九鬼克俊先生

地域の基幹病院で認知症診療に率先して取り組んできた経験を生かし、認知症に特化した専門診療と、患者さんとご家族の身近な相談役を担い、柔軟な医療を提供するいるか心療所を開業した九鬼克俊先生。早期発見・早期治療に結びつけるため、必要なときは往診にも対応。まちのお医者さんとして、ずっと支える覚悟をもって日々、患者さんとご家族に向き合っています。そのためには医療と介護の連携が必要であることを認識し、多職種のチームワークで地域連携にも取り組んでいます。

 

市民病院にもの忘れ外来を立ち上げた九鬼先生

「九鬼という名前はちょっと怖そうでしょう?だから皆さんに好かれ親しまれるように“いるか”と名付けたのですよ」(九鬼先生)。

温和な笑顔でそう語る院長の九鬼克俊先生が、いるか心療所を開業したのは2008年。心療内科と精神科を標榜して現在1日に約70人の患者さんを診ており、そのうち約半分が認知症で、今も新規受診の患者さんが増えているといいます。

九鬼先生が本格的に認知症に向き合ったのは、加古川市民病院に勤務していた時代のこと。2002年、同院に認知症専門外来(もの忘れ外来)を立ち上げたのが九鬼先生でした。

「当時、認知症の患者さんを抱えたご家族が、介護に疲れてうつ病になり診察に来られるケースが増えていました。お話を聞くと、認知症を診る病院は加古川になく、姫路か神戸まで行かなければならないので大変だとおっしゃるんです。私はそのころ神戸大学の認知症を研究するグループに所属していたこともあり、加古川にも診療の場を設けようと、そのグループの先輩から教えを受けてもの忘れ外来をスタートさせたのです」(九鬼先生)。

 

より幅広く認知症の診療に取り組むために

加古川市民病院のもの忘れ外来は、開設直後から予想以上に患者さんが多く受診し、週1回の予約診療ではとても対応しきれず一般外来でも診るようになりました。

「つまりこの地域にそれだけの需要があったということです。私は啓発活動や在宅医療、地域連携などにもっと幅広く取り組むべきだと考えていましたが、公立病院に勤務する立場では、なかなか自分の思い通りには動けませんでした。そこで、いるか心所を立ち上げる道を選んだのです」(九鬼先生)。

現在は、ご家族から同l心療所に相談があり、認知症の疑いがありながら本人に受診する意思がない患者さんがいた場合には、多職種連携で対応して、必要に応じて九鬼先生が往診に出向いています。

「認知症の診療で大事なのは、何よりも早期発見・早期治療によって重症化を防ぐことにあります。実際に診てみるとうつ病だったということもありますが、疑いのある患者さんを放っておくわけにはいきません。また、介護保険制度を活用するにしても、行政のサービスを受けるにしても、まず医師が診断をつけないことにははじまりません。早い時期から社会資源を利用することでご家族の負担を減らし、ご家庭での介護が続けられると考えています」(九鬼先生)。

 

患者さんの行動、言動の観察が診断の鍵

受付事務 石井和美さん 受付事務 石井和美さん

認知症の診察において九鬼先生は、問診と所作の観察を重視しています。もちろん最新の知見を取り入れながら、各種の心理検査のほか必要に応じて脳の画像診断や脳波の検査などを行い、鑑別診断も行っています。

九鬼先生は「実際に会って話を聞き、様子をつぶさにみることが大事。軽度の患者さんのなかには医師の前ではうまく取り繕う人もいますから、ご家族や介護職の方からの情報が大切です」と明言します。

「認知症の治療には、薬物治療と同じくらい患者さんの生活状況とご家族や周りの人との関係性が影響します。治療を開始する前に、患者さんの生活環境を把握し、安心して暮らせる環境づくりをすることが大切だと考えています」(九鬼先生)。

受付事務の石井和美さんは、患者さんとの何気ないやりとりを大切にしているそうです。通常の仕事は窓口での対応や事務業務ですが、患者さんやご家族に目を配り、待合室での様子を見て気づいたことがあれば、九鬼先生や精神保健福祉士らに伝えています。

「直接治療する立場ではありませんが、患者さんやご家族がはじめて接する病院のスタッフは私たち窓口。どんな不安を抱えておられるのかを察知して院内に伝えるのも大事な役割だと思っています」(石井さん)。

 

患者さんとご家族の不安をぬぐうための気配り

受付事務 寺口和美さん 受付事務 寺口和美さん

患者さんやご家族の不安をどう感じ取り、どう対応するかは、スタッフに共通の課題。多くのスタッフが「患者さんとご家族の笑顔が少しでも増えるように」「来院されたときより帰るときは少しでも安心して帰っていただきたい」と声をそろえます。

「ご家族の愚痴をお聞きすることも大切」というのは受付事務の寺口和美さん。

「認知症の患者さんのご家族は介護に疲れている方が多くおられます。患者さんご本人がいないとき、苦労話をお聞きし『何でも相談してください』とお声掛けすることで、少しでもお気持ちが楽になるのではないかと思っています」(寺口さん)。

石井さんも「患者さんのことで先生に今日は伝えたいことがある、というご家族がいらっしゃったときは、ご家族が伝えやすいように、カルテにメモを挟んで診療前に先生に目を通してもらえるようにしています。また、受付用の伝言ノートやカルテへのメモ等を使って患者さんの情報を受付スタッフ間で共有し、患者さんとご家族がスムーズに受診できるように心がけています」と、スタッフ間での工夫を話します。

 

専門職による患者さん、ご家族のサポート

臨床心理士 久留嶋祥吾さん 臨床心理士 久留嶋祥吾さん

同心療所では、臨床心理士と精神保健福祉士による専門的なケアを提供しています。

心理検査を担当する臨床心理士の久留嶋祥吾さんは「患者さんにできるだけリラックスしてもらうよう心がけています」と言います。「『できなかったらどうしよう』と検査結果を不安に思う方がおられますので、『検査といってもクイズやゲームのようなものですよ』とご説明して、楽しみながら普段の実力を発揮していただけるようにしています。また、検査の途中でうまく回答されたら、できていることを伝えて安心してもらい、『検査を受けてよかった。自分にはまだ、こんなにできることがあるんだ』と思ってもらえるように留意しています」(久留嶋さん)。

精神保健福祉士の山下聡美さん、橋爪美紀さんは、ご家族のサポートにおいてなくてはならない存在です。生活に関する相談、介護のポイント、利用可能な社会資源の説明等、時間をとって丁寧にご家族の相談にのっています。

山下さんは「生活環境やご家族の関係は患者さんごとに違いますから、簡単には理解できないまでも精一杯耳を傾けるようにしています。患者さん本人やご家族にしかわからない辛さや憤り、喜びについてできるだけお話しいただけるように考えて毎日向き合っています」と語ります。

 

患者さんを支えるご家族への“教育”が大切

認知症の治療について九鬼先生は「医療と介護の両輪が大事」だと持論を述べます。

「患者さんの生活環境やご家族との関係が悪ければ、いくらお薬を処方しても効果には限界があります。ましてやご家族が『こんなこともできないの!』と患者さんにきつくあたってしまうと、症状を悪化させかねません。中核症状の進行を防ぎ、BPSD(周辺症状)が出ないようにするには、ご家族による適切な介護が不可欠なのです。またそのためにはご家族を支え、援助することが非常に大切です」(九鬼先生)。

こうした考えから同心療所では、家庭での介護に関するご家族への“教育”にも力を注いでおり、ここでも精神保健福祉士のお二人が重要な役割を担っています。

精神保健福祉士 橋爪美紀さん 精神保健福祉士 橋爪美紀さん

「まず、認知症はどんな病気なのか、ご家族はどう対応すればいいのかを理解してもらうことが大切。また、認知症の患者さんにもできることはありますから、できることを生かし、お互いが居心地のよい場所を作ってもらえるようにお伝えしています」(橋爪さん)。

「お話しするだけでなくご家族からお聞きすることも重要だと考えています。お話しいただいているあいだだけでも日々の介護という“重い荷物”をおろして、肩の力を少しでも抜いて楽な気持ちになっていただきたいと思っています」(山下さん)。

 

地域連携にも積極的に取り組む

九鬼先生といるか心療所のスタッフの皆さん 九鬼先生といるか心療所のスタッフの皆さん

同心療所では、ご家族の支援を目的として、現在介護している方やかつて経験した方が集う「あしかの会」を設立。毎月1回会合を開き、精神保健福祉士が取りまとめ役となって、各自の経験や課題などを共有し相談できる場を設けています。

さらに九鬼先生は、介護の現場や地域の先生方との協力は不可欠と考え、講演会などの啓発活動に取り組み、地域連携にも力を注いでいます。

「認知症の医療・介護は長期間にわたるケースが多いため、専門医が孤軍奮闘しても意味はなく、さまざまな職種が連携して患者さんとご家族をサポートしなければなりません」そう持論を述べる九鬼先生は、自らがリーダー役になって開業医、介護関係者などが参加する勉強会を組織しました。

「開業医の先生のなかにも、認知症に強い問題意識を持っている方がおられますよ」と九鬼先生は手ごたえを実感する一方で、「介護の現場は目の前の課題に手一杯で勉強する余裕のない場合が多く、制度的な改善が必要だ」と課題を指摘。九鬼先生は、将来的には介護サービスを提供することも視野に入れています。

「大切なのは、患者さんのお世話をすることではなく、患者さんの居場所や役割を考え見つけることです。日本の社会は“いつまでも若々しく元気でいること”“ピンピンコロリ”を重視しがちですが、すべての高齢者にそれが可能でしょうか?高齢になったら素直に今のご自身を受け入れ、自分にできることはやりつつも、できなくなったことは人に任せるなど自分のできる範囲で、穏やかに最期を迎える、そうした医療・介護もあっていいのではないかと思っています」そう語る九鬼先生の言葉から、患者さんやご家族を心から思いやる気持ちが伝わってきました。

 

取材日:2013年9月11日

いるか心療所の外観
いるか心療所の外観

いるか心療所

〒675-0065
兵庫県加古川市加古川町篠原町111
医療ビルおいしゃさん 3F
TEL:079-451-8322

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