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在宅医療に特化、24時間365日患者さんとご家族を支える
<愛媛県松山市 医療法人ゆうの森 たんぽぽクリニック>

医療法人ゆうの森 理事長 永井康徳先生
医療法人ゆうの森
理事長 永井康徳先生

たんぽぽクリニックは、外来や入院は一切行わず、すべてのマンパワーを在宅医療に集中。計3箇所の在宅専門クリニックのほか、居宅介護、訪問介護の事業所を併設し、グループ診療やWebを活用した多職種連携など機動力に優れた対応態勢で、地域の在宅医療を牽引しています。

限られた人生の時間にどう向き合うのか

「患者さんに最も近く寄り添える在宅医療を、質の高いレベルで実践したい」――ゆうの森理事長の永井康徳先生が、そんな決意をもって在宅医療専門のたんぽぽクリニックを立ち上げたのは2000年秋。当時、在宅専門のクリニックは東京、大阪などの大都市圏にいくつかあっただけで、四国ではこのたんぽぽクリニックが初めてでした。

「それまで私は愛媛県南部で僻地医療に携わっており、外来の延長で在宅でも診ていました。あるとき老衰で亡くなる100歳のおばあさんを看取り、“これが人の自然な死なんだ”“家で最期を迎えるという選択肢もあるんだ”と気づき、本格的に在宅医療に取り組むことにしたのです」

そう決意した永井先生のほか看護師と事務職が1人ずつという小さな規模でのスタートでしたが、永井先生は「必ずニーズはある」との確信を持っていました。「家で最期を迎えたい」「家で看取りたい」という患者さんやご家族の声があるにもかかわらず、大半の病院がその声に応えていなかったからです。

「もちろん健康で長く生きるのは大事ですが、いつかは死と向き合わなければなりません。今の日本の病院は、とにかく最期まで手を尽くすことが主眼で、医師は“治りません”“治せません”と言うことができないんです。一方在宅医療は、もう治らないという前提から家での看取りをゴールにします。それは限られた人生の時間にどう向き合うか、ということでもあるのです」(永井先生)。

 

「楽なように やりたいように 後悔しないように」

家でどういう最期を迎え、どう看取ればいいのか――永井先生がたどり着いた1つの答えが、先生の著書のタイトルにもなっている「楽なように やりたいように 後悔しないように」(愛媛新聞社 )という考え方。まず患者さんの痛みや苦しみを和らげる。するとやりたいことが出てくるので、できる限りその思いを叶える。そしてご家族が納得して看取る――これを基本的な姿勢として患者さんとご家族をサポートします。

「ある認知症の女性の患者さんが誤嚥性肺炎で救急病院に運ばれ、その病院の救急医は強く胃ろうを勧めました。しかしご主人と娘さんは自然に看取りたいと考えていたので、たまたま私の同級生だったその救急医を私が説得して、当クリニックで引き取りました」と永井先生は自身にとって印象深い一例を挙げます。

「食べられるものはわずかでしたが、ご主人がとろみをつけたビールで毎日晩酌を楽しみ、2週間後、娘や孫、東京から帰ってきた息子、みんなに見守られながらその女性は息をひきとられました。胃ろうをしなかったことをご家族が後悔しないよう、自然に死を迎えるという選択肢があることを丁寧にご説明しました」(永井先生)。

こうした在宅の患者さんとご家族に寄り添ってサポートするには、相応のマンパワーが必要です。開業当初、患者さんは月にせいぜい10人でしたが、2002年にクリニックを法人化し医療法人ゆうの森を開設して以降、着実に体制を拡充してきました。

 

365日24時間態勢で600人の患者さんを支える

たんぽぽクリニック 作業療法士 檜田佳代さん
たんぽぽクリニック
作業療法士 檜田佳代さん

医療法人ゆうの森は現在、たんぽぽクリニックなど計3箇所の在宅専門クリニックのほか、居宅介護、訪問介護の事業所を併設し、365日24時間態勢でサービスを提供。計11人の医師と90人のコメディカルスタッフが600人の患者さんに対応し、その9割近くが高齢者で、8割以上に認知症がみられるそうです。

たんぽぽクリニックのスタッフ檜田佳代さんは、日本では数少ない在宅専門の作業療法士。「ご自宅だと患者さんが必要としていることがわかる」と在宅のメリットを指摘します。「療法士は得てして自分の技術を駆使し“歩けること”などを目的にしがちです。でも患者さんが本当に望んでいるのは、生活の中で困難になったことのサポート。一般の病院からたんぽぽに転職してそれがわかりました」(檜田さん)。

訪問介護事業所コスモス 所長、介護福祉士 坂田文さん

訪問介護事業所コスモス
所長、介護福祉士 坂田文さん


訪問介護事業所コスモス所長で介護福祉士の坂田文さんも「生活環境を知ることが介護、診療に役立つ」と言います。「例えば認知症の症状は生活環境に左右されることがあります。仮に患者さんに問題行動が出た場合、何か生活面で変化がなかったかどうか確認して担当者間で話し合いをもち、今後の対策を検討します。そうやって家族の一員のような立場で、介護の専門職としてお手伝いできるのが魅力ですね」と在宅診療のやりがいを実感しています。

もちろん、在宅ゆえの難しい条件、必要なスキルも少なくありません。たんぽぽ道後クリニックの医師、亀井修先生はそれを「アウェーで戦うことの厳しさ」に例えます。

 

在宅だからこそ患者さんやご家族との信頼が築ける

たんぽぽ道後クリニック 医師 亀井修先生
たんぽぽ道後クリニック
医師 亀井修先生

「病院をホームとすれば在宅はアウェー。検査機器はないし、そこにいる医師は私一人だけです。一般の病院からたんぽぽに移った当初はやはり緊張しました」そう振り返る亀井先生は続けて、「アウェーだからこそ医師としての感覚が研ぎ澄まされる」と言います。

「今の一般病院は、CTやエコーなど画像でばかり診て患者さんの身体をあまり診ません。聴診器を使わないことも多いと思います。しかし在宅はそうはいきませんから、徹底的に身体を診ます。するとだんだん五感が鋭くなってくるんです」(亀井先生)。

また「患者さんやご家族との深い信頼関係を築くことができるのも在宅の魅力」だと亀井先生は言います。「泌尿器科を専門にしていた私が在宅に転身したのにはいくつか理由がありますが、その1つが“患者さんを何時間も待たせて数分の診療”というのが嫌だったからです。でも在宅ならしっかりと時間をかけて話ができる。特に認知症の場合、ご家族とのコミュニケーションも重要ですから、その点でも在宅にはメリットがあります」(亀井先生)。

たんぽぽクリニックの看護師、古川良三さんも、一般の病院とは異なる患者さんとの信頼関係を指摘します。「ある患者さんが心臓の発作で倒れたとき、横に1時間ずっと座っていたんです。ただ座っていただけで何もしていないのですが、それからはその患者さんからの電話は私宛にかかってくるようになりました。一般の病院なら、いろんなことに追われて、ずっと座っていることも、そうした関係を作ることも難しいでしょうね」(古川さん)。

たんぽぽクリニック
課長、看護師 古川良三さん

たんぽぽクリニック
課長、看護師 古川良三さん

一方で亀井先生は「信頼関係を築くにはそのご家庭の“作法”を守ることが大事」と留意点を掲げます。「24時間365日対応ですから、同じスタッフが行くとは限りません。当クリニックではすべてのスタッフが、それぞれの患者さんのことはもちろん、ご家庭の事情なども共有しています」(亀井先生)。

 

機動力のある態勢で600人の患者さんを支える

永井先生は、たんぽぽクリニックをスタートした当初から、組織的に患者さんとご家族を支える仕組みづくりに注力してきました。その1つが「緩やかな主治医制×グループ診療」、もう1つが「Web会議」です。

たんぽぽクリニックは原則として主治医制をとっていますが、常勤医師で全患者を対象とする夜間休日対応を行うために、グループとして診療を行う体制にしています。これは複数の医師の視点を診療に生かすという面でも有益です。

また、Web会議は3箇所のクリニックをネットで結び、毎朝の全体ミーティングの内容を共有するもので、治療方針の確認などに活用しています。

居宅介護支援事業所コスモス所長でケアマネジャーの高田志乃さんは、「ケアプランを立てるとき、Web会議をフルに生かしている」と言います。「いわばWeb上での多職種連携ですね。医療、介護、それぞれのスタッフが専門的な立場から意見を述べているので非常に参考になります」(高田さん)。

居宅介護支援事業所コスモス 所長、ケアマネジャー 高田志乃さん 居宅介護支援事業所コスモス
所長、ケアマネジャー 高田志乃さん

このほかにも同クリニックでは、スマートフォンでの電子カルテの閲覧や、スタッフによる“申し送りブログ”など、情報共有の仕組みを進化させています。

また、こうした仕組みは、スタッフのスキルアップにも役立っています。「50人診るより600人診る方が医療従事者としての経験値は上がる。ゆうの森のスタッフの経験値は本人の知らないうちに上がっていると思います」(永井先生)。

 

最期の瞬間、そこに医師はいらない

近年、国は在宅医療を促進する方向で診療報酬・介護報酬を改定しており、平成24年度の改定においても同じ方向が示されました。在宅に特化して地域医療を支えるたんぽぽクリニックの取り組みは、今後全国各地に広がるであろう動きを先んじていると言えます。

しかし、在宅医療が今後拡大、定着するには「終末期の医療に対する、社会的なコンセンサスが必要」だと亀井先生は訴えます。

「病院で胃ろうや点滴を続けることを本当に患者さん自身が望んでいるのかどうか――人生はいつまでも続くわけではありません。医師もご家族もまっすぐに死と向き合うことが必要です」(亀井先生)。

また、永井先生は「患者さん自身とご家族が納得できる最期を迎えることが一番大切」だと指摘します。

「病院では医師や看護師が延命治療をするために、あるいは死亡診断をするために、ご家族には部屋から出て行ってもらうケースがあります。しかし、本当に最期の瞬間に医師は必要なのでしょうか。いくつかの選択肢をお示しし、納得してご家族での看取りを選ばれたのなら、そこに医師はいりません」(永井先生)。

 

取材日:2012年5月22日
医療法人ゆうの森 たんぽぽクリニックの外観

医療法人ゆうの森 たんぽぽクリニック

〒791-8056
愛媛県松山市別府町444-1
TEL:089-911-6333

施設のホームページへ

 

医療法人ゆうの森 たんぽぽ道後クリニックの外観

たんぽぽ道後クリニック

〒790-0903
愛媛県松山市東野6-5-5
TEL:089-908-6622

 

医療法人ゆうの森 たんぽぽ俵津診療所の外観

たんぽぽ俵津診療所

〒797-0111
愛媛県西予市明浜町俵津3-228
TEL:0894-65-0026

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