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県の認知症医療の拠点として、地域で介護・医療を連携
<高知県高知市 医療法人武田会 高知鏡川病院 >

高知鏡川病院 医師 大久保晃先生 医師 大久保晃先生

高知鏡川病院は、昭和31年に医療法人として設立された、長い歴史を持つ病院です。神経科と精神科のほか、睡眠障害の患者さんのための睡眠医療センターを備え、2011年春からは県より認知症疾患医療センターの指定を受けて多くの患者さんの医療向上に貢献しています。

県初の認知症疾患医療センターに指定

県中央部を流れる鏡川近くにある高知鏡川病院では、外来は精神科・神経科・心療内科、認知症、睡眠障害の診療を行い、3棟ある入院病棟はそれぞれ精神科・神経科、認知症、睡眠医療と認知症短期入院病棟となっています。認知症外来のほか、重度認知症患者デイケア施設、立地は異なりますがグループホームを運営、症状や状態に合わせた医療とサービスで患者さんの暮らしを支えてきました。その実績が認められ、2011年4月に高知県から指定を受け、認知症疾患医療センター事業をスタートしました。

認知症疾患医療センターは、専門医が診断、治療方針の決定をするだけでなく、地域包括支援センターや開業医と連携して患者さんが地域で暮らし続けることを支援する認知症専門医療機関です。同院で看護師、精神保健福祉士などのスタッフと共に治療にあたる大久保晃先生は、「患者さんやご家族からの相談を受け付け、認知症の検査・診断を行って治療するだけではなく、福祉サービスの必要性に応じて地域包括支援センターに情報を伝えてケアプランの導入を図ったり、開業医で対応が可能な場合ではアドバイスをしながら対応してもらうなど、ひとつの機関で完結するのではなく福祉・医療とつなげて、患者さんをサポートしていく組織です」と言います。もちろん患者さんだけでなく、地域包括支援センターや開業医からの相談も受け、アドバイスや指導も行い、地域の開業医に患者さんの治療を委ねることもあるそうです。

認知症疾患医療センターの指定は高知県では同院が唯一となり、県の認知症医療の拠点として、重要な役割を担います。センター事業スタート後、相談件数は月を追って増えており、現在は連日予約が埋まっている状態。専門医療機関がいかに求められているかがわかります。

 

認知機能検査では問診を重視して診断

認知症の診療に長年携わってきた大久保先生は、同院は「特別な治療は行っていない」と謙遜しながらも、「総合病院のような設備はありませんが、CT機器は備えてありますし、MRIやSPECTなどの検査は外部の医療機関に委託して検査を行っています」と言います。

ただ、「認知症は、まだ原因や過程が十分に解明されていない疾患です。症候学的な特徴を問診で診断するのが重要だと思っています」と問診の重要性を強調します。

そして、「患者さんに対しては、病識があれば状態を詳しく説明しますし、ない患者さんの場合は説明する内容を変えます。ご家族は不安や心配を抱えていらっしゃいますから、今後の見通しや対処法、アルツハイマー病では最近新薬も出ましたので、そのようなことも説明して、不安の解消に努めます」と患者さんとご家族の心に寄り添う治療を心掛けています。

高知鏡川病院 精神保健福祉士 久保絵理さん 精神保健福祉士 久保絵里さん

患者さんの心に寄り添おうとする思いは、スタッフも同じです。認知症疾患医療センターに勤務する精神保健福祉士の久保絵里さんは、「認知機能検査を担当していますが、患者さんが検査を受けていくなかで、できないことがあるために落ち込んでいく方もいらっしゃいます。たとえできないことはあっても、検査が終わったときには笑って帰ってほしいというのが私たちの願いです。高齢の患者さんには標準語では伝わりませんから、土佐弁を使うようにしたり、和んでいただけるよう、工夫しています」とやはり患者さんの心を気遣います。

 

患者さんの言動を否定せず受け入れるのが重要

高知鏡川病院 看護師 安光英加さん 看護師長 安光栄加さん
精神保健福祉士 寺岡英世さん 精神保健福祉士 寺岡英世さん

心に寄り添うと共に、患者さんの言動を受け入れることを大切にしています。「患者さんの行動には意味があると言います。患者さんが理解しにくい行動をとったとき、『認知症だから』ととらえるのか、患者さんの考えていることを想像するのかで対応は変わります」と語るのは、看護師長の安光栄加さん。

右側にマヒのある患者さんが、自分は赤ちゃんをおんぶしているのだと常に主張しているケースがありました。その言動の理由を他のスタッフと考え意見を出し合っていると、マヒのある右肩を重く感じるからおんぶしていると感じているのではないかと言ったスタッフがいたそうです。「そういう考え方もあるのか、と驚きました。そうすると、その患者さんに対して『赤ちゃんは大丈夫ですよ』という声かけもできます。患者さんの考えていることが全部わかるわけではありませんが、他の職員も日々探ってくれているので、あきらめずに洞察していきたいです」(安光さん)。

「患者さん同士が会話をされていて、話の内容はかみ合っていなくても穏やかに会話が続いていることがあります。そのお話の内容に対して、間違っているところを指摘するのではなく、そのまま受け入れることが大切だと思っています」と精神保健福祉士の寺岡英世さんも患者さんの言動を否定しないことの重要性を語ります。

 

重度認知症患者デイケアでは同じスタッフが同じ患者さんを担当

高知鏡川病院 看護師 兼松容子さん 看護師長 兼松容子さん

認知症は、在宅で介護するご家族へのサポートも重要です。同院では、2004年からデイケア事業をスタートしたほか、デイケア利用者の一時的な症状の悪化には短期入院で対応しています。なかには、息子さんがひとりで介護している家庭もあり、厳しい環境で生活していましたが、デイケアに通い続けることで次第に患者さんが落ち着いてくると、周りも落ち着くのだそうです。患者さんをケアすることがご家族にも良い影響を与えることになります。

「薬での治療はもちろん行いますが、決して頼りすぎない簡潔な医療を目指したい」(大久保先生)という同院では、例えばデイケアでは利用する患者さんが居心地の良さを感じられるように、いつも同じスタッフが対応する形を取っています。「同じ環境で、同じ顔が接していると、患者さんが落ち着いてくるんです」とデイケア事業にスタート当初から関わっている看護師長の兼松容子さんは言います。「環境の変化から興奮する場合、薬を使用しながらデイケアを利用してもらうこともありますが、環境に馴染んで落ち着いたら薬がいらなくなるんです」とやはりデイケアを担当する寺岡さんが隣でうなずきます。

 

精神保健福祉士がご家族のニーズを探りサービスを提案

高知鏡川病院 精神保健福祉士 足達万理子さん 精神保健福祉士 足達万理子さん
高知鏡川病院 精神保健福祉士 高芝綾子さん 精神保健福祉士 高芝綾子さん

認知症は症状が患者さんひとりひとり異なるだけでなく、ご家族の事情や考え、家族構成もそれぞれ違い、まさに十人十色です。患者さんの状態に合った福祉サービスを紹介しても、実際にはうまくいかないこともあり、患者さんやご家族が望まない場合もあります。

「老老介護をされていて、一般的にはお二人で生活することは難しいと思うのですが、生活自体が成り立っていることもあります。そうすると、私たちが必要だと思うサービスでも、いらないんですね。本当に必要とされるサービスを探り、提案して、少しでも長くご自宅で暮らしていただきたいです」と精神保健福祉士の足達万理子さんは言います。

同じく精神保健福祉士の高芝綾子さんもまた、ご家族のニーズを的確につかみ、それに応えることに注力します。「かかりつけ医が検査の結果を教えてくれなかった、きちんと話を聞いてくれなかった、とその対応に失望したり、ストレスを抱えて当院に来られるご家族もいらっしゃいます。担当の医師にそのご家族の気持ちを伝えると、受診後、『先生が話を聞いてくれた。ここに来て良かった』と言ってくださいました」と顔をほころばせます。

 

啓蒙活動を行い、さらに地域と連携した医療の提供を

認知症疾患医療センターは、高知県では同院に設置されるのみ。担う役割は少なくありません。「早期発見だけでなく予防も進めるのが理想」(安光さん)、「最近は若年性の認知症も増えているようですが、40~50代の患者さん向けのデイケアはまだ少ない。80~90代の患者さんとは当然適したプログラムが違いますから、若い患者さん向けのデイケアに携わりたい」(兼松さん)と、スタッフの言葉からは熱意があふれ出します。

また、早期発見の重要性がうたわれるなか、「早期発見される患者さんは増えていますが、重症になるまで気がつかない、放置しているケースも多いのが現状。様々な方面に啓蒙活動が必要です」と大久保先生は言います。現在も高齢者支援センターや医師会向けの研修会を実施しています。「認知症は社会の高齢化に伴って増えていき、珍しいものではなくなっていくでしょう。特別な病気ではなく一般的な病気としてとらえることができるように、啓蒙活動も含め、地域と連携して医療を提供していけたら、患者さんやご家族にとって良い環境になるのでは」(大久保先生)。センターの活動は始まったばかり。介護や医療と連携しながら、認知症治療の拠点として揺るぎなく地域に根ざしていきます。

 

 

取材日:2011年7月13日
高知鏡川病院の外観

医療法人武田会 高知鏡川病院


〒780-8037 高知県高知市城山町270
TEL:088-833-4328

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