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医療と介護の連係プレイで在宅での看取りをめざす
<群馬県伊勢崎市 大井戸診療所>

大井戸診療所 院長 
大澤誠先生 大井戸診療所
院長 大澤誠先生

認知症疾患医療センターが10拠点も整備され、地域連携づくりの活動も盛んな群馬県で、認知症の在宅医療・ケアに取り組む医療法人あづま会。かかりつけ医としての診療所と通所やグループホームを総合的に運営し、「早期診断と介入から看取りまで」を目標とした取り組みを進めています。

診療所、通所リハビリ、グループホームまで

「認知症の患者さんが住み慣れた地域で暮らし続けるためには、初期・中期・後期・終末期と病状が進んでいくに従って、適切な医療と介護を受けられる仕組みが必要です。自宅だけでなく通所施設や短期入所施設も生活の場と捉えたうえで、病状の段階に沿って認知症のBPSD(周辺症状)や合併症に対応するのが医師の役割であり、家族の負担軽減も含めた生活の再構成を担うのがケアマネジャー。医療と介護が綿密に連携し、患者と家族の事情や希望を汲み取ったケアプランを作り、実行できる地域社会をめざしています」と語る大澤誠先生は、1987年、群馬県伊勢崎市に精神科・内科を標榜する大井戸診療所を開設して以来、一貫して認知症を主体とした在宅医療に取り組んできました。

1991年には医療法人格を取得し、重度の認知症患者を対象としたデイケアを開設(後に通所リハビリテーションに変更)。その後も、訪問看護ステーション、在宅介護支援センター(現在は高齢者地域支援センター)、ケアプランセンターを開設し、2002年にはグループホームとデイサービスセンターも加わりました。在宅医療を重視する考えからあえて病床は持たず、近隣の医療機関との連携を深めると同時に、5つのグループホーム、2つの有料老人ホームの協力医療機関として活動するほか、大澤先生は3つの特養の嘱託医を務めています。

大井戸診療所では外来診療を受ける患者のほぼ半数は糖尿病・高血圧症・脂質異常症などの慢性疾患で、認知症と認知症以外の精神障害がそれぞれ約2割ずつを占めています。

もの忘れ外来は予約制で週1日・2名の枠で診察を行い、初診では自己紹介から始めて問診や身体の診察をしながら会話のなかで長谷川式簡易知能評価スケールをチェック。血液や尿の検査を行い、胸部レントゲン写真や心電図もとります。CTやMRIは連携医療機関である伊勢崎佐波医師会病院を利用しています。「認知症専門医の役割は診断までと考える医師もいますが、私は患者さんを看取るところまで関わりたい。専門医であると同時に『かかりつけ医』でありたいと思っています」と大澤誠先生は語ります。

冬期には風邪の患者さんも多く訪れる地域密着の診療所だからこそ、家族もまだ気づいていないごく早期に認知症の徴候をキャッチし、早期治療に繋げていくことも可能となります。「初期に診断がつけば、どういう介護を受けたいか患者本人の希望を聞き取る時間的な余裕が生まれます。そして、その希望を叶えるためにも継続的に診ていきたいのです」(大澤先生)

また、認知症患者さんは身体の不調をうまく表現することができないので、身体に早く気づいて対処することも必要です。アルツハイマー型認知症は病状が進むと最終的には寝たきりになるので、訪問診療にも力を入れています。

 

外来、訪問、通所施設で同じスタッフが

医療法人あづま会のスタッフは総勢で約60名。理学療法士、作業療法士は訪問や通所リハ、通所介護、グループホームを兼務し、その他の職種も部署を超えた異動も珍しくありません。「外来の患者さんが通所リハや通所介護に通ったり、訪問看護を必要とするようになるなど、同じ患者さんでも利用する医療や介護のサービスが病期によって変化していきます。環境が変わっても同じ顔ぶれのスタッフがいれば安心感がありますし、スタッフも患者さんと継続的に関わることで、きめ細かい配慮ができるようになります。休職者や退職者が出た場合にカバーしやすいという人事的なメリットもあります」と大澤先生はその意図を語ります。

大井戸診療所 訪問看護師 塚本厚子さん 大井戸診療所
訪問看護師 塚本厚子さん

訪問看護を担当する塚本厚子さんは、「認知症の患者さんが名前を覚えて下さったり、『待ってたよ~』と言って下さることもあります。外来から長いお付き合いのことも多いですし、ご家族が気軽に相談していただける雰囲気を作りたいですね」と語ります。

現在はグループホームの課長(管理者)を勤める介護福祉士の伊藤慎一さんは、「通所リハビリを担当していたころスタッフのマネジメントについて悩みを抱えていたのですが、若年性認知症の患者さんが相談に乗って下さいました。実は彼は管理職だった方で、組織運営のベテランだったのです。若年性の方は高齢者向けの作業に違和感を持たれることが多いですが、私を指導したり、時には手伝ったりすることが彼の楽しみになっていたようです。その方がグループ外の入所施設に移られるまで、この『師弟関係』は続きました。前向きな生き方は最後まで変わらず、利用者は皆さん、人生の先輩なんだと教えられました」と、患者さんとの思い出を語ります。

グループホームおおいど 介護福祉士 伊藤慎一さん グループホームおおいど
介護福祉士 伊藤慎一さん

月に1度、課長会議でサービス改善の議論や患者さんについての情報共有が行われていますが、各課を束ねるスタッフリーダー達はそれぞれ複数の現場を経験しているので連携はスムーズに進みます。医療と介護の望ましい連携が、まず、あづま会のグループ内で築かれているのです。

 

高齢者向け住宅の整備も視野に

デイサービスセンターおおいど 介護福祉士 廣瀬学さん デイサービスセンターおおいど
介護福祉士 廣瀬学さん

認知症専門医がトップを務めるこのグループに対して、地域の期待も大きなものがあります。通所介護の課長(管理者)である廣瀬学さんは、「地域では『最後の砦の大井戸』と呼ばれることもある当グループでは、比較的、症状が進んだ方の利用が多いのが特徴かもしれません。前頭側頭型認知症の患者さんもいて攻撃性が出ないよう目が離せませんし、最近、増えてきている若い認知症の患者さんもできるだけ個別対応をしたいので、なかなか大変です」と語ります。

通所リハビリ担当課長の井草謙さんも、「午後のプログラムは固定化せずに、落ち込んでいる様子なら個別対応にするなど、利用者の日々の変化に注意して対応するようにしています」と心がけを語ります。

大井戸診療所通所リハビリ 介護福祉士 井草謙さん 大井戸診療所通所リハビリ
介護福祉士 井草謙さん

また、現在、力を入れている取り組みのひとつに、男性向けのプログラムの改善があります。「女性の利用者はデイサービスに来て、友だちとのお喋りや活動を主体的に楽しめる方が多いのですが、男性はゲームなどに参加するのを嫌う傾向がありますからね」(大澤先生)

さらに、在宅医療を充実させるために不足しているのは「住まい」という考えから、有料老人ホームや高齢者専用賃貸住宅の開設をめざして土地を確保し、運営事業者との交渉なども始めています。「高齢者向けの住まいを設置運営する事業者は、入居者が併設の通所介護を日常的に利用することを前提に事業計画を立てます。経営的な問題を考えればそれは理解できなくもないのですが、『入居前から通っていたデイサービスに継続して通いたい』、『デイサービスケアで活動するより部屋で静かに過ごしたい』という希望があれば、それを尊重すべきだと思います」と大澤先生は語ります。

 

群馬の地域連携づくりのために

群馬県は早くから県と県医師会が協力して、もの忘れ検診に取組み、また群馬大学の山口晴保先生がリードする、ぐんま認知症アカデミーなどもあって、認知症への関心は高いと言えます。それが、10箇所という全国トップクラスの認知症疾患医療センターの数にも結びついていると思われます。また、全国的な活動であるBSAP(各地域に、BPSD(周辺症状)を診断・治療・ケアできるチームの育成を目標とするプロジェクトで、医師やスタッフ向けの研修などを開催)の活動も定期的に行われています。

大澤先生は診療や医療法人運営の傍ら、これらの活動にも関わり、さらにOFFJTという公開研修を主催して、地域の社会資源に関わる人たちのスキルアップにも取り組もうとしています。

地域連携の推進は、認知症の在宅医療とケアが可能な社会を築くこと。「早期診断と介入から看取りまで」という理想を実現するための取り組みは、これからも続いていきます。

 

 

取材日:2011年6月21日
医療法人あづま会 大井戸診療所の外観

医療法人あづま会 大井戸診療所

群馬県伊勢崎市東小保方町4005-1
TEL : 0270-62-3333

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